森下雨村『二重の影』(森下雨村少年少女探偵小説コレクション1)ヒラヤマ探偵文庫
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【ヒラヤマ探偵文庫】
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本巻には、佐川春風名義「幻の男」(『日本少年』大正13年1月号)と森下雨村名義「二重の影」(『少女倶楽部』大正12年1月号~4月号)の二作品が収録されている。「幻の男」は、江戸川乱歩「怪人二十面相」において博物館の館長に化けるトリックの元ネタになった作品であるといわれている。主人公の河合茂夫少年は、『日本少年』における雨村の少年探偵シリーズキャラクターである。掲載された『日本少年』大正13年1月号は、「少年努力成功号」という特集であるが、関東大震災後なので、肩の凝らない、少年探偵の成功物語を、雨村は描きたかったのだろう。今回、ようやく復刻することができた。
「二重の影」は、『少女倶楽部』創刊号から四ヶ月間連載された作品である。創刊号からの掲載なので、力のこもった作品になっている。ほぼ同時期に、雨村は『少年倶楽部』にも佐川春風名義で「少年探偵富士夫の冒険」を連載していた。雑誌の読者集団が異なるので、その書きぶりの違いに注目してほしい。
主人公、澤本美智子の目線にそって描かれた殺人事件は、『少女倶楽部』の読者達に寄り添い、共感しやすいものなっていた。そこには、生活に密着しながら、少しでも冒険を夢見る〈少女〉がいたのである。はたして「二重の影」の「二重」とは、いったい何を意味するのであろうか。
【書誌】
著者:森下雨村
判型:新書版
頁数:70頁
発行:2023年9月
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